結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~

 運転している八木沢さんをつい無遠慮に見つめていたら、気づいた彼が笑った。

「もうすぐ着きますよ」
「楽しみです。旅行って、中学の修学旅行以来なので、とてもわくわくしてます!」
「中学校の修学旅行はどこに行ったんですか?」
「奈良・京都です」
「定番ですね」
「高校の修学旅行は沖縄だったから、本当は私も行きたかったんですけど……」

 祖母の手術と重なってしまい、親戚に付き添いをお願いしたが忙しいからと断られた。お金もなかったし、仕方ないと自分に言い聞かせて諦めた。旅行に行きたかったのは勿論だが、友達と共通の思い出がないことが辛かった。

「沖縄も行きましょう。僕が連れて行きます」
「いつか行ってみたいです」
「まずは箱根ですね。そろそろ芦ノ湖が見えてきますよ」

 芦ノ湖の水源は湧き水らしい。山頂にあるから、より一層、空が湖面に綺麗に映り込んでいる気がする。

 箱根町港にさしかかり、「箱根駅伝で毎年見るところ!」とあちこちを見回していたら、「そんなに素直な反応されるとは。連れてきた甲斐があります」と笑われた。往路ゴール・復路スタートの記念碑もあるらしい。

 箱根の関所を見て回り、ランチのために移動した。元箱根港に近い駐車場は満車だったので、少し離れた場所に車をとめて歩く。湖から吹いてくる風が心地よく、東京よりも涼しく感じた。


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