結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
「こんな広い部屋は初めてですー!」
案内されたスイートルームは最上階で、窓からは芦ノ湖が一望できる。雨が上がってガスが晴れたら、きっと富士山が見えると思う。夕闇の木立の影がとても綺麗で、まるで違う世界に来たみたいだった。
部屋の中央に共有のリビングルームがあり、それを挟んで寝室がふたつ。マスターベッドルームとセカンドベッドルームと呼ぶらしいが、どっちがどっちなのか、私にはちっともわからなかった。ベッドはどちらも大きくて、お布団ふかふか!
湖側にはバスルームがあり、そこには大きな窓があった。完全に日常から切り離された空間だった。
「お風呂、外からは見えないのかな? 初めて見ました、すごいですね!」
「……和咲さんが喜んでるから、これが正解だったのかもしれません」
当初の予定通り二部屋とれなかったことを気にしているのかなと思ったので、笑って答えた。
「私は嬉しいです」
「嬉しいって本当ですか? 僕と同室は嫌じゃないですか?」
「え、それは大丈夫ですよ。いつも一緒じゃないですか」
「いつも一緒……そうですね」
八木沢さんがそう呟いて、はにかんで笑う。その笑顔を可愛いと思ってしまった。