結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
レストランの利用者は宿泊客だけではないようで、満席の店内は華やかで賑やかだった。カトラリーから豪華だったが、思ったほど格式張っていなくてほっとした。
前菜もスープも旬の食材。夏らしい色合いで、味付けもさっぱりして軽やか。きっと緊張して食べきれないと思っていたけれど、美味しくて完食してしまった。
家に帰ったら再現してみたいと思い、八木沢さんはどれを気に入ったのか聞いた。
「そうですね、鱸が美味しかったです」
「山菜が添えてあって美味しかったですね」
鱸のポワレなら家でも作れそう。数は少ないけれど、洋食器もいくつかあったので、あまり高価でないものを使わせてもらおう。
明朝には雨があがる予報だから、朝食のあとは庭園を散歩したいこと。さっき行かせてもらったスパで頂いた棗が美味しかったから、自分用に買って帰りたいと思っていることなど、他愛のない話をたくさんして楽しかった。
少し驚いたのは、八木沢さんがアメリカで学位をとったという話だった。
「入省後に留学させてもらいました。自分が海外に行くなんて想定してなかったので、新鮮でした」
帰国後、内閣府大臣官房などを経て、また統計局へ戻るまで論文を書き続け、日本でも博士号を取ったらしい。
勿論、私と八木沢さんでは環境が違う。でも、自分はどうだろうと恥ずかしくなった。
もっと何か、やれることがあるのでは。
祖父母のためとか、生活のためだけじゃなくて、自分が本当にやりたいこと。