失くしたあなたの物語、ここにあります
合点がいったようにおばさんが一方的に納得するのと同時に、うららが興味津々で身を乗り出す。
「沙代子さん、お店出すの? だから、志貴くんが沙代子さんらしいレシピで作ったらいいって言ってたんだー」
型に入れた生地をオーブンに入れながら、どきりとしてしまう。どういうわけか、おばさんの前で天草さんの話になるのはいまだに慣れない。
「まあ、志貴がそんなことを? 沙代子さんのこと気にかけてるのねぇ」
心底感心するおばさんには、からかうような邪心がまったくない。それでも、沙代子は落ち着かない。
「あ、えぇ、まぁ。気にかけるっていうか……、あっ、私のことはいいんです。そうだ、うららちゃん、さっきの雑誌の話だけど、今でも持ってる?」
「おばあちゃんのケーキが紹介された雑誌のこと?」
「うん、そう。どんなケーキが紹介されてたのか知りたくて」
「なんだったかなぁ、ケーキ。あの雑誌は……」
そう言いかけて、うららは急に渋い表情をする。
「うららちゃん?」
どうしたのだろう。何か嫌なことでも思い出させてしまったのだろうか。
「あっ、なんでもないです」
彼女はあわてて首を振る。
「そういえば、あの雑誌、銀一さんにあげたって言ってなかった?」
「あー、そうでしたそうでした。あげるって言ったら、銀一おじさん、買ってくれたんですよね」
おばさんに言われて、うららは思い出したようだ。
「父の古本屋に売ったの?」
「ま、そういうことになります」
照れるように笑った彼女は、それ以上は聞いてほしくなさそうに、使い終わったボウルと泡立て器をつかむと、そそくさと流し台に向かった。
「沙代子さん、お店出すの? だから、志貴くんが沙代子さんらしいレシピで作ったらいいって言ってたんだー」
型に入れた生地をオーブンに入れながら、どきりとしてしまう。どういうわけか、おばさんの前で天草さんの話になるのはいまだに慣れない。
「まあ、志貴がそんなことを? 沙代子さんのこと気にかけてるのねぇ」
心底感心するおばさんには、からかうような邪心がまったくない。それでも、沙代子は落ち着かない。
「あ、えぇ、まぁ。気にかけるっていうか……、あっ、私のことはいいんです。そうだ、うららちゃん、さっきの雑誌の話だけど、今でも持ってる?」
「おばあちゃんのケーキが紹介された雑誌のこと?」
「うん、そう。どんなケーキが紹介されてたのか知りたくて」
「なんだったかなぁ、ケーキ。あの雑誌は……」
そう言いかけて、うららは急に渋い表情をする。
「うららちゃん?」
どうしたのだろう。何か嫌なことでも思い出させてしまったのだろうか。
「あっ、なんでもないです」
彼女はあわてて首を振る。
「そういえば、あの雑誌、銀一さんにあげたって言ってなかった?」
「あー、そうでしたそうでした。あげるって言ったら、銀一おじさん、買ってくれたんですよね」
おばさんに言われて、うららは思い出したようだ。
「父の古本屋に売ったの?」
「ま、そういうことになります」
照れるように笑った彼女は、それ以上は聞いてほしくなさそうに、使い終わったボウルと泡立て器をつかむと、そそくさと流し台に向かった。