失くしたあなたの物語、ここにあります
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悠馬は1週間が過ぎても、まだ鶴川にいた。意外と住みやすい街でしょう? と沙代子が言うと、まだわからないと答えたが、毎日出かけて、観光地めぐりを楽しんでいるようだった。
母と牛込さんはまだ一緒に暮らしていないらしいが、いずれは母が牛込さんの自宅に住むことになるだろう。そうなったら、悠馬は生まれ育ったアパートをなくすことになる。
つらかったら、ここで一緒に暮らそう。
沙代子は父にそう言ってもらいたかった言葉を、悠馬にまるごと言ってあげるつもりはあったが、鶴川に住むことが彼にとって最善かはわからないと思い悩んだりもしていた。
「悠馬くん、まだこっちにいるんだね」
ケーキの配達を終えると、天草さんが帰ろうとする沙代子を引き止めた。
「あ、うん。来週から学校が始まるみたいだから、それまではいるみたい」
「まだ8月なのに学校あるんだ?」
「進学校だから、補習があって夏休みも短いみたい」
「へぇ、大変だ。そう言えば、悠馬くん、税理士になりたいらしいね」
「えっ、ほんとう?」
沙代子でも知らない話をどうして知ってるんだろう。
「あ、知らなかった? 今朝はやく、悠馬くんが来てさ。そう言ってたよ」
「そうなの? アルバイトがある日は私も早くに家出るから、悠馬のことは気にかけてあげられてなくて。今朝はやくって、迷惑かけてごめんなさい」
「ちょうど店の前を掃除してたら、悠馬くんが通りがかって、俺が声かけたんだよ。それにしても、高校生とは思えないぐらい落ち着いてるし、東京の進学校に通うなんて優秀な子なんだね」
悠馬は1週間が過ぎても、まだ鶴川にいた。意外と住みやすい街でしょう? と沙代子が言うと、まだわからないと答えたが、毎日出かけて、観光地めぐりを楽しんでいるようだった。
母と牛込さんはまだ一緒に暮らしていないらしいが、いずれは母が牛込さんの自宅に住むことになるだろう。そうなったら、悠馬は生まれ育ったアパートをなくすことになる。
つらかったら、ここで一緒に暮らそう。
沙代子は父にそう言ってもらいたかった言葉を、悠馬にまるごと言ってあげるつもりはあったが、鶴川に住むことが彼にとって最善かはわからないと思い悩んだりもしていた。
「悠馬くん、まだこっちにいるんだね」
ケーキの配達を終えると、天草さんが帰ろうとする沙代子を引き止めた。
「あ、うん。来週から学校が始まるみたいだから、それまではいるみたい」
「まだ8月なのに学校あるんだ?」
「進学校だから、補習があって夏休みも短いみたい」
「へぇ、大変だ。そう言えば、悠馬くん、税理士になりたいらしいね」
「えっ、ほんとう?」
沙代子でも知らない話をどうして知ってるんだろう。
「あ、知らなかった? 今朝はやく、悠馬くんが来てさ。そう言ってたよ」
「そうなの? アルバイトがある日は私も早くに家出るから、悠馬のことは気にかけてあげられてなくて。今朝はやくって、迷惑かけてごめんなさい」
「ちょうど店の前を掃除してたら、悠馬くんが通りがかって、俺が声かけたんだよ。それにしても、高校生とは思えないぐらい落ち着いてるし、東京の進学校に通うなんて優秀な子なんだね」