失くしたあなたの物語、ここにあります
*
美しく澄んだブルーは、沙代子の目の前で次第に紫へと変化していった。
「天草さんの淹れるマロウブルーは本当に澄んでて綺麗」
マロウブルーは魔法にかけられたかのように、美しく変化していくハーブティー。
ほれぼれとガラスのカップを眺める沙代子に、天草さんがレモンを乗せた小皿を差し出す。
「レモンを垂らすとね、ピンクに変わっていくよ」
「知ってる。空の色の変化になぞらえて、夜明けのハーブティーって呼ばれてるんだよね」
「同じ色は作れないから、奇跡とも言うね」
「本当に神秘的だよね。天草さんにとって、マロウブルーは特別なの?」
沙代子は思い切って尋ねてみた。彼はきっと、詩音さんとの間にあった出来事を彼女から聞いてると思ったから。
しかし、彼は怪訝そうな顔をした。そうして、ため息をつく。
「特別って……、詩音から聞いた?」
彼も詩音さんを呼び捨てするのだ。そんなあたりまえのことに、沙代子はどきりとした。
「えっと、詩音さんから聞いたでしょ?」
射るような眼差しに戸惑いながら尋ねる。
「あれから、詩音と会った?」
意外にも、彼はそう言う。知らなかったのだろうか。
「あの日、詩音さんが追いかけてきたから」
「……そうなんだ。ごめん。彼女さ、電話してくるって出ていったんだ。葵さんを追いかけていったなんて考えもしなかった。でも……、そうだよな。なんで気づかなかったんだろう」
後悔するように息をつく。
「詩音さんね、私に会いたくてまろう堂に来たみたい」
「葵さんに? どうして?」
「なんだろう。私がどんな人か知りたかったのかも」
詩音さんはまっすぐな人のような気がした。対立する気はないと言ったのも真実だろう。
ただ、知りたかっただけだ。天草さんと付き合ってる女の人って、どんな人なんだろうって。それが、葵沙代子だったから複雑な感情を抱いただけで。相手が沙代子でなくても、詩音さんは確かめに来たんじゃないかと思う。
美しく澄んだブルーは、沙代子の目の前で次第に紫へと変化していった。
「天草さんの淹れるマロウブルーは本当に澄んでて綺麗」
マロウブルーは魔法にかけられたかのように、美しく変化していくハーブティー。
ほれぼれとガラスのカップを眺める沙代子に、天草さんがレモンを乗せた小皿を差し出す。
「レモンを垂らすとね、ピンクに変わっていくよ」
「知ってる。空の色の変化になぞらえて、夜明けのハーブティーって呼ばれてるんだよね」
「同じ色は作れないから、奇跡とも言うね」
「本当に神秘的だよね。天草さんにとって、マロウブルーは特別なの?」
沙代子は思い切って尋ねてみた。彼はきっと、詩音さんとの間にあった出来事を彼女から聞いてると思ったから。
しかし、彼は怪訝そうな顔をした。そうして、ため息をつく。
「特別って……、詩音から聞いた?」
彼も詩音さんを呼び捨てするのだ。そんなあたりまえのことに、沙代子はどきりとした。
「えっと、詩音さんから聞いたでしょ?」
射るような眼差しに戸惑いながら尋ねる。
「あれから、詩音と会った?」
意外にも、彼はそう言う。知らなかったのだろうか。
「あの日、詩音さんが追いかけてきたから」
「……そうなんだ。ごめん。彼女さ、電話してくるって出ていったんだ。葵さんを追いかけていったなんて考えもしなかった。でも……、そうだよな。なんで気づかなかったんだろう」
後悔するように息をつく。
「詩音さんね、私に会いたくてまろう堂に来たみたい」
「葵さんに? どうして?」
「なんだろう。私がどんな人か知りたかったのかも」
詩音さんはまっすぐな人のような気がした。対立する気はないと言ったのも真実だろう。
ただ、知りたかっただけだ。天草さんと付き合ってる女の人って、どんな人なんだろうって。それが、葵沙代子だったから複雑な感情を抱いただけで。相手が沙代子でなくても、詩音さんは確かめに来たんじゃないかと思う。