繋いだ手は離さない
 そしてボクはそんな愛理香がとても好きだった。


 髪をフワッと掻き揚げると、シャンプーの残り香がして、体にすっかり染み付いてしまった石鹸の匂いのバンの香りも漂ってくる。


 愛おしい人が放つ香りなので、ボクは許せてしまう。


 コーヒーを啜り終わった愛理香は洗面所へと入っていき、顔を洗い出したのか、ジャブジャブという水の撥ねる音が聞こえてくる。


 何気ない感じで一日が始まっていた。


 ボクも愛理香も黙っていても想いが伝わってくる。


 これを人は愛と呼ぶのだろう。
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