繋いだ手は離さない
第8章
     8
 ボクがコーヒーを飲み終わると、愛理香も洗顔とメイクを終えたらしく、外出用の顔をして洗面所から出てきた。


 後は格好だけだ。


 彼女はTシャツの上から薄手のシャツを一枚羽織って、ボクに、


「あたし、もう出るわ。今日の補講出ないといけないし」


 と言い、部屋の出入り口に向けて歩き出した。
 

 玄関先でロングブーツを履き、アパートを出ようとする。


「ちょっと待ってよ。俺は今日、補講なんかないんだぞ」


 ボクがそう言うと、愛理香が、


「ああ、そうだった。あたしが取ってた科目だけ補講があるんだったわ」


 と言い、ボクに


「部屋閉めないから、留守番しててくれる?」


 と重ねて言って、玄関を施錠せずに出ていった。
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