繋いだ手は離さない
 夏でも冬でも風呂上りの、喉がカラカラに乾いた状態なら、水分が欲しくなる。


 ボクも愛理香もそういった生理的な部分は同じだった。


 互いの髪の毛からはシャンプーの香りが漂っている。


 彼女が、


「ビールまだ飲む?」
 

 と訊いてきたので、ボクが、


「これぐらいで止めとくよ」


 と言って、ビール缶にわずかに残っていた分を全部飲み干した。


「おいで」


 愛理香がそう言い、ボクを自分のベッドへと誘う。


 ボクが言葉に甘えるようにして、彼女の普段眠っているベッドに横になった。


 辺りには女の子特有の甘酸っぱい香りがあって、ボクはそれを嗅ぎながらささやかではあるが、幸せを感じ取る。
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