《連載中》波乱の黒騎士は我がまま聖女を甘く蕩かす〜やり直しの求愛は拒否します!
「何のことかしら。さっぱりわからないわ」
「伯父であるレイモンド卿に頼んで、モロー伯爵家の領地内に聖女の一時滞在所を設営するって約束させたのは、イザベラ、あなたよね。モロー伯爵領にはルグランの生家がある。そこにはルグランの病弱なお母様も。滞在所に聖女を置いておけば、いつでもお母様は病の治療ができる」
取り巻きの聖女たちが一斉に顔を見合わせる。しかし所詮はイザベラの崇拝者たちである。驚いて顔色を変えても、イザベラに不審な目を向ける者はいない。
ユフィリアとて、過去の事を今更とやかく問い詰める気はない。ただ、一刻も早くこの不愉快で不毛なやり取りを終わらせて、この場を去りたかった。
「……知らないわ」
言いながら顔を反らせるイザベラの顔に焦りが見えた。
必死で隠そうとしているが、図星を刺された視線が僅かに泳いでいる。
「そう? ならいいけど。美しく聡明だと名高い筆頭聖女に見初められたうえに美味しい餌を目の前に吊るされたのだから、ルグランはもう断る理由がないわね。完全なるあなたの勝利よ。さあ、これで気が済んだでしょう、もう行くわ」
きびすを返したユフィリアの背中に、くくっ、と小さな笑い声が届く。