《連載中》波乱の黒騎士は我がまま聖女を甘く蕩かす〜やり直しの求愛は拒否します!
筆頭聖女ステラの記憶
『ユフィはね、昔の私によく似ているの』
鼓膜の奥深くから呼びかける小さな声に耳を傾ける。
それはユフィリアがまだ幼い日の── 十歳でこの教会に連れられてすぐの頃の記憶であった。
『そうやって拗ねていても物事は少しも良くならない。あなただって、本当は笑顔でいたいのでしょう?』
ステンドグラスから七色の光が堕ちる礼拝堂の一角で、十歳の少女ユフィリアの目の前に膝をついた美しい聖女は、白い花が溢れるように微笑んだ。
銀糸の長い髪をまるで寝起きさながら乱したまま、不機嫌そうに突っ立っているのは少女の頃のユフィリアだ。
ふたりの姿を遠巻きに眺めているような不思議な感覚。けれど観ている側のユフィリアは不思議と冷静なのだった。
──……ステラ、姉様……っ