《連載中》波乱の黒騎士は我がまま聖女を甘く蕩かす〜やり直しの求愛は拒否します!

葛藤、その理由は……



 顔が赤い猿、と聞いた取り巻きの聖女たちも、いよいよ堪えきれなくなったらしい。イザベラの周囲には、くすくすと含み笑いが漏れ聞こえていた。

 構うことなくレオヴァルトは続ける。

「人のものを羨み、浅ましく奪い取るのは。口を赤く塗った下卑た猿がする事だろう」
「なっ?!」

 慌てて口元を両手で隠すイザベラ。

「大聖堂の筆頭聖女がどれほど有能かは知らないが。貴様のそれは信仰を装った自己愛と祈りに見せかけた支配だ。仮にも中央大聖堂の筆頭聖女を名乗っておきながら、恥ずかしくないのか」

「しっ、支配ですって?! 私はこの聖都を代表する筆頭聖女なの! 今日まで数多の民衆をこの手で救ってきた! 大司教ルグリエット様にも認めていただいた大聖女なのよ!? 黒騎士の分際で、無礼者が……!」
 
 悔しさに顔を歪め、ギリギリと歯を鳴らすほどに食いしばっている。
 レオヴァルトはそんなイザベラを半眼で見下しながら冷たく言い捨てた。

「自己犠牲を厭わず弱者のために祈った事が、貴様にはあるのか。真に尊い力を持つ者ならば、顔も名も知られずとも影の存在となって人々を癒すものだ。腐りきったこの教会にも筆頭聖女となるべき美しい心と覚悟を持った真の聖女がいる。その者と並べば、貴様はその薄っぺらい自信を思い知るだろう」

 ますます頬を紅潮させたイザベラが反論する。

「真の聖女ですって? どこにそんな子がいるって言うのよ!」
「さあな。金儲けにしか興味がない卑劣な悪党に平伏する者たちにはわかるまい」

「…………!」

 ここまで説き伏せられてしまっては、口達者なイザベラもすっかりお手上げである。しかも、取り巻きの聖女たちの前で赤っ恥をかかされたようなものだ。




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