《連載中》波乱の黒騎士は我がまま聖女を甘く蕩かす〜やり直しの求愛は拒否します!
 おかげでユフィリアは十八歳のベテラン聖女となった今でも、かすり傷程度の簡単な傷さえ治せない《無能で我がままな聖女もどき》。
 治癒を求める者を無碍に追い返すことも珍しくないので、聖女認定から半月もしないうちに《無能》の後ろに《クズ》がくっついた。

 無能なクズ聖女ユフィリア。
 だからこそ王族に求められることも、第二王子との婚姻も、夢で見た《悲劇的な未来》も避けられた──はずだ。

「なのに、どうして《まだ》あの夢を見るの……未来は変わったのに」

 ユフィリアが選んだ回避方法で間違いないのなら、なぜ今になって《《また》》同じ夢を見たのだろう。

 ──このやり方でいいんだよね? 私を庇ったあの人を、死なせずに済むよね………?

 愛している。
 互いの言葉が胸に刺さる。
 自分は彼を、夫である第二王子を、愛していた。

 ——考えていても仕方がない、私は自分にやれることをやるだけ。第二王子との結婚は避けられた。未来は変わる……。誰も死なない。これから先の人生は、きっとうまくいく……!

 窓際に立ってカーテンを開ければ朝ぼらけの空が眩しかった。
 眼前に広がる王都の町を眺めながら、ため息の代わりに「う〜ん」と伸びをする。
 背中が痛むので、いつもよりちょっと控えめに。

 唐突にノックの音がして、隣部屋のグレースの明るい声がした。

「ユフィ……起きてる? 私だけど、入ってもいい?」


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