《連載中》波乱の黒騎士は我がまま聖女を甘く蕩かす〜やり直しの求愛は拒否します!
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「ん……っ」
うすらと目を開ける。
アルハンメル王家の第二王子、マルセル・レオヴァルト・ヴァルドフ・ルイ・アルハンメル殿下(王族の名前はやたら長い)に嫁いで来た日から約一年弱。
この寝台で眠り、赤の他人と──それも七つも年上の男性と眠るという綱渡りのような緊張感の中で、睡眠の安らぎを得ることにもようやく慣れた。
「生涯、あなたを抱くことはない」と宣言した夫は、その言葉通りユフィリアには指一本、触れてこようとはせず。
そもそも結婚当初はすこぶる仲が悪かったのである、いっそ犬猿の仲だったと言ってもいい。
レオヴァルトは聖女が持つグラシアという神聖力に不信感を抱いていたし、ユフィリアは初めて顔を合わせた時からよそよそしく不機嫌さが顔に滲み出ていたレオヴァルトを上目使いで警戒するしかなかった。
はっきり言って、初対面から《《いがみ》》合っていた。
──私との結婚がよほど嫌なんだろうって思ったわ。私を嫌ってる相手に尻尾を振って媚を売るとか、くそくらえだし?
そんなふうだったから、互いに広すぎる寝台の端と端とに背中を向けて眠るのが習慣づいてしまっていた。
夜中に寝返りを打って目覚めれば、寝入った時から微塵も動いていないらしいレオヴァルトの広い背中が、いつでも寝台の遥か遠くにあった……はずだ。
なのに今夜ばかりは何故だか様子が違っている。