《連載中》波乱の黒騎士は我がまま聖女を甘く蕩かす〜やり直しの求愛は拒否します!
 薄目を開ければ、視界いっぱいにシャツがはだけたレオヴァルトの《《胸が》》あった。

 筋肉質だとは思っていたけれど、何だこれは!? まるで鳥の胸肉ばりに盛り上がっている。よく見ると片腕の太さも細マッチョの領域をゆうに超している。
 メジャーで採寸してみたい欲求に駆られてしまうが、この状況では無理だろう。

 普段は政務仕事やら何やらで忙しくしているのは知っているけれど、これほどの筋肉を保つための鍛錬を、いったいいつ、どこで為していると言うのだろう。

 ……全くもって謎だ。レオが起きたら絶対に聞いてみよう。

 そんな事を思っていると、もぞ、と胸の筋肉が揺れた。
 何気なく視線を上げると、目と鼻の先に整いすぎたレオヴァルトの顔があって、ユフィリアは石化魔法をかけられたように硬直してしまう。
 
 レオヴァルトは未だ眠っているようで、翼の睫毛は閉じられている。
 そう言えば夫の寝顔を見たのはこれが初めてだった。

 整いすぎた顔面につい見入ってしまう。
 起きている時の顔はさすがに見慣れたとはいえ、寝顔はまた違った趣があって興味深い。こんなふうに夫の顔を眺めている妻の絵面は、側から見れば怪しすぎるだろうが気にしない。
 同時にレオヴァルトの規則正しい寝息を聴きながら、この状況をどうにか理解しようとした。
 
 ──そういえば私、戦場で敵に変な薬を盛られて、意識を失ったんだわ。




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