《連載中》波乱の黒騎士は我がまま聖女を甘く蕩かす〜やり直しの求愛は拒否します!
 あれからどれくらいの時間が経ったのかはわからない。
 けれど戦場からアルハンメルの王城に戻るまで三日はかかるだろうから、少なくとも三日以上眠り続けていた事になる。それでも身体が羽根のように軽いのは、治癒魔法の一種であるポーションを施されたか何かだろう。

 ──聖女のグラシアほどじゃないけど、栄養不足とか気怠さにならポーションでもじゅうぶん効くものね。

 それでも丸三日以上、眠り続けていたのなら、強靭な精神力を持ち合わせているレオヴァルトだって気が気じゃなかったはずだ。
 優しいレオヴァルトのこと、ユフィリアがいつ目覚めるかと心配で添い寝をしていたのだろう。

 ……ふうん、と鼻を鳴らす。

 自分を心配しているレオヴァルトの顔を想像すれば、胸の奥がきゅっと痛んだ。
 沸き立つような甘い喜びが込み上げてくる。

 同時に、盛り上がるレオヴァルトの胸にどうしようもなく触れてみたくなった。こんな機会は滅多にない。現に、今まで一度もなかった。
 木の下で受け止めてもらった時、レオヴァルトの胸全体としては硬く感じた。あの感触は正しかったのか……直に触れてみたい、触って、確かめたい。
 美しいものを眼前にさらされ、己の《《フェチ》》にどうしても抗えなかった。
 
 ──ちょっとくらい平気よね? 起きない……よね?

 そうっと指先を伸ばして、そうっと触れてみる。
 けれど、そうっと触れた程度で堅さはちっともわからないのだった。

 さわさわしてみる。
 意を決して、ぐ、と強めに押してみた。指が弾かれるような弾力を感じる……これは堪らない、クセになりそうだ!
 そもそもユフィリアが最初に惹かれたのはレオヴァルトの筋肉質な二の腕なのだ。これでは聖女ならぬただの変態だわ……なんて自分の癖《ヘキ》に酔っていると。

「何をしてるんだ?」




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