《連載中》波乱の黒騎士は我がまま聖女を甘く蕩かす〜やり直しの求愛は拒否します!
「ほら、私って神聖力が微弱すぎるでしょ? だから教会側は早く結婚させたいんだと思う」

 特にあのレイモンドがね、とユフィリアはウィンクしながら付け加えた。

「じゃあユフィは、知らない男の人をいきなり婚約者に仕立て上げられたってこと?」
「そういう事みたいね」

 ──おまえが聖女として無能だからじゃないのか。
 不意にレオヴァルトの嫌味な微笑みが浮かんで、ユフィリアはむっ、と唇を尖らせた。

「そう言えば、あの時……」
 大聖堂で卒倒し、レオヴァルトに身体を支えられていた時だ。

『ユフィリア。』
 自分の名を呼ぶ懐かしい声を、耳の奥で聞いたような気がした。

「第二王子、殿下……?」

 思わず口を突いて出た言葉にグレースが首を傾げるのを、「ううん何でもない」とふるふる首を振る。

 ──グレースにも、言えないけど……っ。
 私はきっともう、本気の恋は出来ない。

『ユフィリア、愛してる』

 ──顔も思い出せないあの人は、あの人の『愛してる』は。
 どうして今でも、私の心をこんなにも揺さぶるのだろう?

『まだ言ってない、あなたを愛してるって』

 ──そう……私はまだ、前世の「恋」を引きずっている。
 大切だった《《あの人》》を、忘れられずにいる。

 ユフィリアが考え事をしている間に、グレースもどうにか落ち着いたようだった。見れば葡萄ジュースを幸せそうに啜っている。

「……でも、彼。遠目に見ただけだけれど、ワイルドな感じがちょっとかっこよくなかった?」

 降って沸いたような《かっこよい》という言葉に、ユフィリアは世界が終わったような声で「グレース……」と反論。



< 80 / 236 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop