恋の微熱に溺れて…
「そうなんだ。慧くんの車に乗れて嬉しい」

深い意味はないと思う。純粋に嬉しいだけだと分かっている。
それでもそう言われてしまうと、調子に乗ってしまう。たまには運転に慣れるためにもドライブデートで練習しようと決めた。

「京香さんならいつでも乗せますので、ドライブデートがしたくなったらいつでも言ってくださいね」

「うん。分かった。その時は遠慮なくお願いするね」

そうはいっても、京香さんは遠慮してしまうであろう。それを俺が察知して、連れ出してみるのも悪くない。
こうやって足りない部分を補える関係は、理想の恋人像だ。これからもお互いのことを知っていき、お互いを想い合える関係性でいられたらいいなと思う。

「分かりました。お誘いお待ちしております」

いつかそんな未来があると信じて、俺は密かに期待しながら待つことにした。

「京香さん、乗ってください」

助手席側のドアを開けた。京香さんに乗ってもらうために。

「ありがとう。お邪魔します…」

京香さんが乗ってくれたので、俺は運転席側に周り、俺も車に乗った。

「では目的地へ向かうために、出発します…」

エンジンをかけ、走り出した。目的地がバレないように事前に練習していたため、ナビがなくても目的地へと辿り着ける。
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