激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
「行きましょう」
 待機していた彩陽が言う。
 来年辞める彩陽にとって最後の夏祭りとなる。

 彼女のためにも失敗したくない。
 紫緒は決意をもって頷いた。



 二人で舞台に上がると、司会が巫女舞を紹介した。
 会場のざわめきが遠のき、紫緒の緊張は高まっていく。

 雅楽が始まり、紫緒と彩陽は舞った。
 手を振るたびに、その手の神楽鈴が鳴る。
 現代のダンスと違い、動きはゆったりしている。静かに厳かに。

 袴のすそを踏んづけて転んだこともあった。
 動きが違う、目線が違う、とさんざんダメ出しをされた。
 夜ごとに練習を続けた。

 今は観衆の視線を受けて、だけどそれが気にならない。
 耳に拾うのはただ律たち楽師の奏でる雅な旋律。

 思い出そうとしなくても体が動く。
 ふわふわと、不思議な心地がした。
 充足感が胸に満ちる。

 ああ、もう終わってしまう。
 終わるのが惜しかった。いつまでも舞っていられそうなほどだった。

 雅楽の終了とともに、舞も終わりを迎える。
 最後のポーズを決めると、会場からは割れんばかりの拍手が届いた。
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