激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
***

 舞を見届けたミカは、紫緒に背を向けて人ごみに紛れた。
 紫緒にはもう二度と会わないと決めていた。

 最後に彼女の素晴らしい舞を見ることができて良かった。
 彼女は千暁が幸せにするだろう。

 勝負を挑んだとき、純粋に紫緒を手に入れたかった。彼女を幸せにするのは自分だと信じていた。

 今から考えれば、とミカは思う。

 彼女がいなくなったあのとき、自分は国を捨ててまで彼女をとることができなかった。
 すぐに警察に捜索を要請していれば、千暁より先に見つけ、手元に取り戻せただろう。

 結局自分は彼女よりも国の威信をとった。
 だが、千暁は違う。
 外交問題に発展させるぞと脅しても屈しなかった。
 きっとあのときにはもう、勝負はついていたのだ。

 背負うものが違うと言い訳したところで、行動の結果は変わらない。それがすべてだ。

 それでもなお彼に挑んだのは、幼稚な自己満足だ。
 
 男として負けたわけじゃない。そう思いたかったのかもしれない。

 銃弾を斬るなど普通は不可能だ。そんな勝負を受けるとは思わなかったし、なおかつ彼が勝つなんて予想もしなかった。

「完敗だ。紫緒……幸せに」
 彼は一人、呟く。

 彼の後ろを横切る女の子が、友達の男の子に虹色の綿菓子をわける。二人はおいしそうにそれを頬張っていた。
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