🍞 ブレッド 🍞 ~フィレンツェとニューヨークとパンと恋と夢と未来の物語~【新編集版】
 しかしその翌日、事態は急変していた。
 未明にアントニオが突然頭痛を訴えて、嘔吐を繰り返し、朦朧(もうろう)とした様子になったという。
 救急車で運ばれると、すぐにCT検査などを受け、くも膜下出血の疑いと共に脳動脈瘤破裂の危険もあると告げられた。
 それは一刻の猶予もない状態と判断され、緊急の開頭手術が行われた。
 動脈瘤の根元を医療用のクリップで留めて血流を遮断するという大変な手術だったらしい。

 手術は無事成功して一命は取り止めたが、運動麻痺や感覚麻痺、嚥下(えんげ)障害などの後遺症が出る可能性と共に構音障害や失語症の心配もあると告げられた。
 しかも回復に向けてのリハビリテーションは長期間必要で、退院できるのは早くて1か月後、回復が遅ければ3か月後ということもあるのだという。
 
 ルチオに頼まれて原材料や仕掛品の始末などをするためにベーカリーに急行した弦は、すべての作業を終えると、シャッターに臨時休業の張り紙をし、病院に急いだ。

< 128 / 169 >

この作品をシェア

pagetop