🍞 ブレッド 🍞 ~フィレンツェとニューヨークとパンと恋と夢と未来の物語~【新編集版】
丸一日自問自答したのち、弦は意を決して日本にいる父親に電話をかけた。
「受験を止める? 何を言ってるんだ」
ただならぬ声が弦の耳を襲った。
「すぐに帰ってこい!」
物凄い剣幕だった。一瞬スマホを耳から離さなければならないほどだった。
「無理だよ」
アルバイト先が大変なことになっていることを必死になって説明したが、理解はしてもらえなかった。
「つべこべ言わずに早く帰ってこい!」
それだけ言うと、電話を切られた。
予想した通りの展開だったが、それでもかなり動揺してしまった。
父親になんと言われても自らの意志を貫くつもりでいたのに、強い口調で反対されると平気ではいられなくなった。
最悪のケースが頭に浮かんできたからだ。
それを考えると体が震え始め、それは夢の中まで続いた。
親子の縁を切られる夢で、うなされて何度も目が覚めては背筋に冷たいものが走った。
パン職人として自立できる自信はまだなかったし、このニューヨークで生き抜いていけるほどの強さを持ち合わせているとは言えないからだ。
しかし、ベーカリーを見捨てるわけにはいかない。
ルチオとアントニオ夫妻とアンドレアを見捨てるわけにはいかないのだ。
彼らに対して「受験があるので辞めます」とは口が裂けても言えなかった。
「受験を止める? 何を言ってるんだ」
ただならぬ声が弦の耳を襲った。
「すぐに帰ってこい!」
物凄い剣幕だった。一瞬スマホを耳から離さなければならないほどだった。
「無理だよ」
アルバイト先が大変なことになっていることを必死になって説明したが、理解はしてもらえなかった。
「つべこべ言わずに早く帰ってこい!」
それだけ言うと、電話を切られた。
予想した通りの展開だったが、それでもかなり動揺してしまった。
父親になんと言われても自らの意志を貫くつもりでいたのに、強い口調で反対されると平気ではいられなくなった。
最悪のケースが頭に浮かんできたからだ。
それを考えると体が震え始め、それは夢の中まで続いた。
親子の縁を切られる夢で、うなされて何度も目が覚めては背筋に冷たいものが走った。
パン職人として自立できる自信はまだなかったし、このニューヨークで生き抜いていけるほどの強さを持ち合わせているとは言えないからだ。
しかし、ベーカリーを見捨てるわけにはいかない。
ルチオとアントニオ夫妻とアンドレアを見捨てるわけにはいかないのだ。
彼らに対して「受験があるので辞めます」とは口が裂けても言えなかった。