🍞 ブレッド 🍞 ~フィレンツェとニューヨークとパンと恋と夢と未来の物語~【新編集版】
 朝になっても恐怖は居残っていたが、強く首を振って父親の言葉を頭から消し、重い体を引きずりながら部屋を出て店に向かった。

 シャッターは閉まったままで、臨時休業の張り紙もそのままだった。
 賑やかだった店の面影はなく、どんよりと重たい空気に包まれているように感じた。

 店横の階段を上がって玄関の前に立ち、チャイムを押した。
 しかし反応はなかった。
 もう一度押してしばらく待ったが、ドアが開く気配はなかった。
 病院に行ったのかもしれないと思って階段を下り始めると、ドアが開く音が聞こえた。
 見上げるとルチオが顔を出していた。
 しかし、かなりやつれて見えた。眠っていないような疲れた顔だった。

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