Nightmare of Light.
《手話ニュースのお時間です。本日午前2時頃、南浜町の中華街にある商業ビルで発泡音が聞こえたという通報がありました》
この時間は使用人さん以外、あまり人がこない時間だ。
みんなどこへ行っているんだろうと思うほど、振動もない。
《過去に暴力団同士の抗争があったとされるビルでもあるため、警察は事件との関連性を調べているとのことです》
字幕と手話。
同時の情報が明確に入ってくる。
テレビ画面と向き合っていたわたしは、なぜか緊張するなかでペンを取っていた。
「ニコさん、どうかされましたか?」
中華街はどこにある───?
わたしが聞くと、普段は穏やかな使用人が一瞬だけ眉間を寄せた。
「………まったく。ニュースも隠蔽(いんぺい)させればいいものを」
聞こえていないをいいことに彼女もつぶやいて、作り笑いを浮かべる。
【もうすぐお夕食の支度です。一緒に作りましょうね】
南浜町の、中華街。
これからずっとわたしの胸に残る地名。
調べる術(すべ)が今あったなら、わたしはすぐに調べていたよ。
スマートフォンさえあれば場所を特定できただろうから。