このドクターに恋してる
「まだお腹空いていない?」
「ちょっと空きました。外に行かなくても、ここで作ってもいいですけど……あ、材料がないですよね?」
「うん、そう。買いに行ってもいいけど、それから作ると食べるのが遅くなるよね?」
「そうですね。せっかく揃えた道具をすぐに使えないのは残念ですけど」
「明日、使おう。食事済ませてから、食材を買ったらいいと思うよ」

 郁巳さんはいろんなことを済ませてから部屋でのんびりしたいらしく、早く外に出ようと急かした。
 私は食事することよりも、お泊まりすることに緊張しているというのに……。

 まず向かった先は、徒歩で行ける距離にあるイタリアンレストラン。
 大通りに面しているものの間口が狭かったので、こじんまりした店かと思ったが、意外に奥行きがあって店内は広々としていた。
 それに雰囲気が落ち着いていて、客がみんな品良さそうに見える。
 スタッフに案内された奥の席に座ると、白のシャツに黒のベストを着た店長さんらしい四十歳くらいの男性がお冷やを運んできた。
 
「浅葉さま、いらっしゃいませ」
「こんばんは」

 郁巳さんがよく行く店だと連れてきてくれたが、本当に常連のようで親しげに挨拶を交わしていた。
 男性が私に柔らかな笑みを向ける。
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