このドクターに恋してる
 ゴクゴクと半分ほど飲んだ私のグラスを郁巳さんは見た。
 彼のグラスより明らかに私のほうが減っている。

「だって、冷えているうちに飲んだほうが美味しいじゃないですか」
「お代わりする?」
「いえ、このあとはウーロン茶にします」
「いい心掛けだ」

 郁巳さんに褒められて、さらに気分が上がった。料理はどれも繊細な味で、心まであたたまる美味しさだった。
 郁巳さんと何度「美味しいね」と微笑み合ったかわからない。
 思ったよりもボリュームがあり、食後の緑茶を飲んで腹部をさする。

「お腹いっぱいです、もう食べられません」
「女の人には多いかなと思ったけど、よく食べたね」
「美味しすぎて、残したくなかったので。でもー、お腹がやばいです」
「丸いお腹、見せてね」
「ダメです。平らになるまでお風呂には入りません」
「いつ、平らになる?」
「さあ……」

 半日くらい経たないと無理な感じだった。
 郁巳さんは入浴するのを食後二時間待ち、欠伸をした。
 車の運転をしてくれたし、あちこち歩いたからお疲れの様子だ。
 そろそろお風呂に入って寝たいところではあるが、私の腹部の膨らみ具合が問題だった。
 恨めしいお腹に手を当て、私は謝る。
 
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