このドクターに恋してる
 室内に入り、ダイニングテーブルの横で足を止めた。
 ふとこのテーブルはどう使うためにあるのだろうかという疑問を抱く。

「もしかして、お夕飯はお部屋で?」
「そうだよ。二人だけのほうがゆっくりできるからね」
「わー、すごい! 楽しみです」

 部屋食とは贅沢だ。浮かれた私は落ち着きなく室内をうろうろと歩いた。
 郁巳さんに座って待とうと手招きされる。広い部屋で私たちは体を寄せ合った。
 私が彼の肩に頭を置くと、優しく撫でられる。気持ちが穏やかになっていった。
 このまま時間が止まってしまえばいいのに……。
 二人だけの世界にいたいと思ったときにドアがノックされて、料理が運ばれてきた。
 二人のスタッフが滑らかな動作で並べていき、飲み物の希望を聞く。
 郁巳さんがビールを頼むと、地元のクラストビールをすすめられた。
 ぜひ飲んでみたいと私は声を弾ませる。郁巳さんがそんな私を笑いながら、すすめられたビールを注文してくれた。

 そして、ピルスナーグラスの注がれたビールで乾杯する。
 
「とっても美味しいです!」
「まろやかで飲みやすいね。陽菜、すぐ飲み終わってしまいそうだね」
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