このドクターに恋してる
 郁巳さんは私を上から下まで見て、どこか怪我をしていないか確認した。

「車に乗るように言われましたけど、困っているところに宇部先生が通りかかったので助かりました。実は光一先生もいました」
「光一さんも?」
「光一先生が車を運転していました」

 先ほど起こったことを郁巳さんに話した。郁巳さんは困った顔で「ふぅ」とため息をつく。

「父が俺を後継者にすると話したと言っていたから、なにか言ってくるだろうなと思っていたけど、まさか陽菜のところに行くとは……ごめん、怖かっただろ?」
「郁巳さんのせいじゃないから、謝らないでください。こうして来てくれて、話を聞いてくれたので安心しました。宇部先生がすぐに話したほうがいいと言ってくれたんです」
「そうか、圭介に感謝だな。あ、悪い。そろそろ戻らないといけなくて」

 郁巳さんは腕時計で時間を確認して、病院に目を向けた。

「はい、戻ってください。私、帰りますね」
「送れなくて、ごめん」
「お仕事中なんだから当たり前ですよ。夜勤、頑張ってください」
「ありがとう。くれぐれも帰り道、気をつけて」

 郁巳さんは心配して、私が角を曲がるまで見送っていた。私は角を曲がる寸前に振り返って、大きく手を振る。
 小さく手を振る郁巳さんは遠目で見てもかっこよくて、好きだなーと改めて思った。
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