このドクターに恋してる
 すかさず兄に突っ込まれて、私は言葉を詰まらせた。
 宇部先生が声を出して、笑う。

「やっぱり陽菜ちゃんはおもしろいね。聞いていて、楽しくなるよ」
「すみません、バカなことばかり言っていて……恥ずかしいです」
「バカなことじゃないし、恥ずかしくならなくてもいいよ。目的がどんなことであろうとも、今ちゃんと仕事をしているのだから引け目を感じることはないよ」

 宇部先生ったら、優しすぎる。こういう立派な人は、人を貶したことはないだろう。
 私は感動で目を潤ませて、胸の前で両手を合わせた。

「宇部先生、ありがとうございます。そんなふうに言ってもらえたのは初めてです」
「そんなお礼を言われるようなこと、言ってないよ。陽菜ちゃんは大げさだねー」
「そういうふうに言うところが優しいんですよー。私一生、先生のファンでいます!」
「一生って、ますます大げさだ。陽菜ちゃんと話すの、ほんと楽しい」

 笑う宇部先生に対して、郁巳先生は黙々と食べていた。
 私は郁巳先生に視線を移す。
 聞いてみたいけど、また冷たく返されるかな……でも、聞きたい。
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