プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
柊仁と『バッグを返せ』『あとで返す』のやりとりを何度も繰り返した莉都花は、結局彼が目的地とする場所までついてきてしまった。
そこは大通りからは少し外れた場所にあるバー。外装から洗練された雰囲気が漂っていて、一見では入りにくそうな店だ。
莉都花はそのバーを前にして、固まってしまう。
「え……ここ?」
「どうぞ?」
柊仁は扉を開いて、莉都花を中へと促している。しかし、莉都花は簡単にはそこへ足を踏み入れられない。
それは、柊仁と一緒に飲みたくないとかそんなシンプルな理由ではなくて、もっと複雑な事情によるものだ。
莉都花はこのバーを知っている。しかも、苦い記憶がある。人生でたった一度だけ、お酒で失敗した苦い記憶が。
いや、正確には記憶はない。なぜなら莉都花はひどく酔っぱらって、記憶を飛ばしたのだから。
このバーに滞在したことだけは覚えているが、それも入店して間もなくのところまでで、自分がバーでどう過ごしたのかも、どうやって家に帰ったのかも覚えていない。
記憶がない以上、店に迷惑をかけてしまった可能性もあるわけで、それを考えると莉都花は自然とこのバーから足が遠のいた。
別にこのバーの常連というわけでもなかったし、それでまったく問題なかったのだが、こうなると逃げてしまったことが悔やまれる。
どうしてこの男は、莉都花に厄介ごとを運んでくるのだろうか。
柊仁が莉都花の事情を知らないことなんて百も承知だが、立て続けに面倒な状況に追い込まれたら、イラっとしてもしかたないだろう。
莉都花はただ一言「帰ります」と言って、柊仁からバッグを奪い返そうとするが、それは簡単にかわされてしまう。柊仁はバッグをひょいと頭上にやって、莉都花の手から遠ざけている。
どうにか取り返そうと、ジャンプして手を伸ばしてみるも、ヒールのある靴ではそもそもあまり飛べず、バッグにかすりすらしなかった。
そんなやり取りをバーのドアを開けたまましているものだから、店内の人間が外の状況を訝しがるのは必然だった。
そこは大通りからは少し外れた場所にあるバー。外装から洗練された雰囲気が漂っていて、一見では入りにくそうな店だ。
莉都花はそのバーを前にして、固まってしまう。
「え……ここ?」
「どうぞ?」
柊仁は扉を開いて、莉都花を中へと促している。しかし、莉都花は簡単にはそこへ足を踏み入れられない。
それは、柊仁と一緒に飲みたくないとかそんなシンプルな理由ではなくて、もっと複雑な事情によるものだ。
莉都花はこのバーを知っている。しかも、苦い記憶がある。人生でたった一度だけ、お酒で失敗した苦い記憶が。
いや、正確には記憶はない。なぜなら莉都花はひどく酔っぱらって、記憶を飛ばしたのだから。
このバーに滞在したことだけは覚えているが、それも入店して間もなくのところまでで、自分がバーでどう過ごしたのかも、どうやって家に帰ったのかも覚えていない。
記憶がない以上、店に迷惑をかけてしまった可能性もあるわけで、それを考えると莉都花は自然とこのバーから足が遠のいた。
別にこのバーの常連というわけでもなかったし、それでまったく問題なかったのだが、こうなると逃げてしまったことが悔やまれる。
どうしてこの男は、莉都花に厄介ごとを運んでくるのだろうか。
柊仁が莉都花の事情を知らないことなんて百も承知だが、立て続けに面倒な状況に追い込まれたら、イラっとしてもしかたないだろう。
莉都花はただ一言「帰ります」と言って、柊仁からバッグを奪い返そうとするが、それは簡単にかわされてしまう。柊仁はバッグをひょいと頭上にやって、莉都花の手から遠ざけている。
どうにか取り返そうと、ジャンプして手を伸ばしてみるも、ヒールのある靴ではそもそもあまり飛べず、バッグにかすりすらしなかった。
そんなやり取りをバーのドアを開けたまましているものだから、店内の人間が外の状況を訝しがるのは必然だった。