プレイボーイと恋の〝賭け〟引き
「んー、26はないな」
「えっ、惜しい! 27だったら、柊仁(しゅうじ)くんのビンゴだったのにね。私のカード、26あったし、私のと交換してあげよっか?」

 柊仁と呼ばれたその男の左隣に座っている女性が、半ば彼に寄りかかるようにしてカードを覗き込んでいる。

 柊仁はそれに嫌がる素振りは見せず、かと言って鼻の下を伸ばすわけでもなく、ただ当たり前に受け入れている。

「ははっ、由美(ゆみ)ちゃんのほうが揃ってないのに?」
「あ、バレた?」
「いや、バレるでしょ。しかたないな。ほい、交換」

 柊仁は、自分にしな垂れかかっている由美の手からビンゴカードを取り上げ、代わりに自分のカードを彼女に渡している。

「え、柊仁くん優しい! ありがとう」
「どういたしまして」

 二人のやりとりはどう見てもカップルのそれだが、柊仁の右隣に座っている女性が、そうではないと教えてくれる。

「ちょっと由美だけずるい」
「ごめん、ごめん。そんな怒んないでよ。かわいい顔が台無しだろ?」

 柊仁が顔を寄せながら言うと、その女性はすぐさま顔を赤く染めている。

 彼女の機嫌はすっかり直っているように見えるが、柊仁はそれだけで終わらない。

「じゃあ、亜矢(あや)ちゃんには――」

 柊仁はそう言いながら亜矢の耳元に唇を寄せ、何やら囁いている。

 さすがに莉都花の位置からでは囁き声までは聞こえないが、亜矢の表情がみるみる柔らかくなっているから、柊仁はよほど彼女を喜ばせる何かを言っているのだと察せられる。

「ええ? 柊仁くん、本当に?」
「本当、本当。期待していいよ?」
「そこまで言うなら期待しちゃおっかなー」

 柊仁と亜矢はくすくす笑いながら意味深なことを言っている。

 二人の秘密の会話をついつい脳内で想像してしまった莉都花は、小さく「無理だ……」と呟いて、人知れず首を振った。

 ああいう男は莉都花の苦手とするタイプだ。誰彼構わず手を出すような人は好きじゃない。一人の人と真剣に向き合ってくれる人が断然いい。

 別にあの男に生き方を改めたほうがいいとか説教垂れるつもりはないが、あの手の人種とは極力関わりたくないし、あまり視界にも入れたくない。莉都花は彼らに向けていた視線を司会側へと移し、それ以降そのテーブルには一切目を向けなかった。
< 5 / 154 >

この作品をシェア

pagetop