一途な皇帝陛下の秘恋〜初心な踊り子を所望する〜
第二章 皇帝陛下の恋

いにしえの時代よりこの大陸の半分の領土を占める万世国は、晴明の代で30代目となる。

5年前、先代の皇帝が病で倒れ床に伏したのを機に、その後を継ぐべく兄弟間で、醜い骨肉の内乱が勃発した。

第1皇太子と第2皇太子の内乱は多くの命を巻き添えにして、1年以上に渡り終止符が付かず、もはや国が真っ二つになるかもしれないと、人々が噂し始めてた頃、何処からともなく1人の救世主が現れた。

それが晴明である。

先代には5人の皇太子がいた。
中でも晴明は第5皇太子で、王位継承なんてものには興味も無く、母親の故郷であるへんぴな山奥で、身分さえも忘れるほど自由で悠々とした少年時代を過ごしていた。

元より母は下級武士の娘であり、後宮で下働きをしていた女中であった。ゆえに晴明を宿した時、既にいた3人の側室には疎まれ、嫌われ後宮では辛い日々を送っていたから、父である先代の皇帝が後宮から出る事を泣く泣く許したのだ。

そんな晴明が何故王位継承の渦に巻き込まれたかと言うと、内乱で傷付き負け戦から逃げ出た第1皇太子が、憎き第2皇太子には王位を渡してなるものかと、末弟である腹違いの晴明の所まで逃げ延びた事に発端する。

そう顔も覚えていなかった兄から仇を打てと言われた時には、はいそうですかと簡単には返事が出来ず、なぜ自分が兵を連れて戦わなければならないのかと、抵抗すら覚えたのだが…

嫌々都に向かう道中で、第2皇太子の謀略武人な振る舞いを聞き、多くの民から助けを求められ、父である皇帝陛下の家臣さえも味方に付け、気付いた時には次期皇帝へと担ぎ上げられていた。

都を占拠していた第2皇太子を追いやり、平和を取り戻した暁には、第1皇太子に家督を継いでもらうつもりだった晴明だが、その頃には、もはや第1皇太子には家臣からの支持が無く、代わりに晴明の地位が上がっていたのだった。

本人自身、未だに何故自分が皇帝に?と疑問を抱えながらの毎日だ。

だから宮廷を開け渡された時も、正妃をと求められた時でさえも、まるで他人事のような状況で、自分は仮の皇帝でしかないんだと、どこかのタイミングで、王位を第1皇太子に返すべきだと様子を伺っていた。

即位を継承してから3年、晴明は28才になった。
にもかかわらず、未だ正妃の座には誰もいない。

とりあえず和平の為だと当てがわれた、由緒正しき家柄の姫君が3人ほど側室にいるが、形ばかりの為誰とも一度ほどしか会った事がない。

政務で忙しいと表立っては言っているが本意ではなく、実のところ密かに恋慕う女子(おなご)がいたのだ。

その事を知る人は数知れず…
側近中の側近、孫李生と僅かなお付きだけだった。

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