一途な皇帝陛下の秘恋〜初心な踊り子を所望する〜
その後何事もなく王宮に戻った晴明は、国王劉進の過剰な接待を最後まで耐え抜いた。

別れ際、劉進から抱きつかれたが、晴明は引くつく顔を何とか隠し、船に乗り込んだ瞬間嘔吐した。
そこまである意味、精神的身体的にも追い込まれたが…。

帰路の船の中、顔色悪く寝込んでいた晴明だが、万世国に近くに連れて段々と立ち直っていった。

そして、1日間の旅を終えて、夕方過ぎに無事に万世国に到着した。

全ての報告を李生に託し、晴明は真っ先、後宮にいる香蘭の元へと急ぐ。

会いたいのはただ1人香蘭のみ。
玄関で出迎えた2人の側室には目もくれず、後宮の廊下を駆け抜ける。

「陛下、陛下…お待ちください。順序と…秩序を、お守りください。」
口煩い宦官が慌てて後を追って来る。

もう知るか!と思いながら一目散に華宮殿へ…

「門兵…へ、陛下を…陛下を止めるのだ!」
慌てた宦官が叫ぶが、家臣の礼をとって出迎えでいた門兵4人のも、戸惑いの目でお互いを見渡すのみ…

ここで晴明の堪忍袋の尾がキレて、振り返りざまに言って退ける。

「ここの主人は誰と心得る。
余の道を阻む者皆クビだ…。そなたも然り、二度と余を止めるな。次は無いと思え。」

晴明に低い声でそう言い放たれれば、誰もがひれ伏し頭を床につけ許しを乞う。

ズカズカと華宮殿へ入れば、すれ違う女中達が慌ててひれ伏し道を開ける。

それを一瞥し前進しながら晴明は、
「香蘭はどこに居るのだ?」
と、苛立ち気味に周りを見渡す。

慌てた女中が指でその方向を示せば、騒ぎを聞きつけたのか香蘭と寧々が、渡り廊下の向こうからパタパタと小走りでやって来るのが見える。

それを見定めた途端、晴明がまた走り出す。
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