一途な皇帝陛下の秘恋〜初心な踊り子を所望する〜
その頃、宮殿で普段と変わらぬ淡々とした様子で、皇帝である晴明は、溜まりに溜まった事務仕事を黙々とこなしていた。
早朝早く、香蘭の旅立ちを笑顔で送り出した筈の晴明だが、それから返事以外の言葉を発しなくなった。
側近である李生は1人、ハーッと深いため息を落とす。
皇帝陛下が、最愛の人を手離して分かりやすく落ち込んでる。掛ける言葉も見つからないまま、もう直ぐ停戦状態の隣国大使との会食の時間が迫っている。
このまま無言を通そうならば、交流関係を悪化させるかもしれない。どうにかして気分を上げてもらわなければ…。
そうだ!っと思い付き、女官に頼み急ぎ茶菓子を用意させる。
「陛下、本日の昼食は香の国の親善大使との会食になります。そろそろ気持ちを切り替えて、国の為に良い働きをしてくださいませ。」
目の前に香り高い紅茶と、香蘭様が作ってくれた茶菓子を置く。
「これは香蘭様のお手製の茶菓子でございます。昨日、陛下の為にと日持ちする菓子を何個か作って下さったそうです。
香蘭様の為にも平和な世を築くべく、頑張って公務に臨んでください。」
「…香蘭が…。」
皇帝晴明はここでやっと言葉を発する。
そして香蘭が作ったという饅頭を一つ手に取り、おもむろに見つめている。
「勿体無い。食べたら無くなってしまうではないか。」
「何を言っておられるか、食べなければ腐ってしまいます。」
呆れ顔で晴明が突っ込みを入れる。
「…。」
しばらくその饅頭を愛おしそうに見つめてから、一口だけかじりまた皿に戻す。
「今日1日をかけて食べるから、このままここに置いておけ。」
冷ややかな声は一見普段と変わらない陛下の平常運転なのだが…。やはりかなりの落ち具合だ。
恋とは時に厄介なものだと、李生は深く感じいる。
早朝早く、香蘭の旅立ちを笑顔で送り出した筈の晴明だが、それから返事以外の言葉を発しなくなった。
側近である李生は1人、ハーッと深いため息を落とす。
皇帝陛下が、最愛の人を手離して分かりやすく落ち込んでる。掛ける言葉も見つからないまま、もう直ぐ停戦状態の隣国大使との会食の時間が迫っている。
このまま無言を通そうならば、交流関係を悪化させるかもしれない。どうにかして気分を上げてもらわなければ…。
そうだ!っと思い付き、女官に頼み急ぎ茶菓子を用意させる。
「陛下、本日の昼食は香の国の親善大使との会食になります。そろそろ気持ちを切り替えて、国の為に良い働きをしてくださいませ。」
目の前に香り高い紅茶と、香蘭様が作ってくれた茶菓子を置く。
「これは香蘭様のお手製の茶菓子でございます。昨日、陛下の為にと日持ちする菓子を何個か作って下さったそうです。
香蘭様の為にも平和な世を築くべく、頑張って公務に臨んでください。」
「…香蘭が…。」
皇帝晴明はここでやっと言葉を発する。
そして香蘭が作ったという饅頭を一つ手に取り、おもむろに見つめている。
「勿体無い。食べたら無くなってしまうではないか。」
「何を言っておられるか、食べなければ腐ってしまいます。」
呆れ顔で晴明が突っ込みを入れる。
「…。」
しばらくその饅頭を愛おしそうに見つめてから、一口だけかじりまた皿に戻す。
「今日1日をかけて食べるから、このままここに置いておけ。」
冷ややかな声は一見普段と変わらない陛下の平常運転なのだが…。やはりかなりの落ち具合だ。
恋とは時に厄介なものだと、李生は深く感じいる。