魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜
「ヘルムートさんは、魔力石をお使いになるの?」

 リーゼロッテは転がり出た魔力石を拾い上げる。

「失礼しました。落ちてしまいましたか」

「わたくしには縁のないものですから、こんなにじっくり見るのも初めてなの」

「国立学院では?」

「使い方は習ったわ。でもね、そもそも何の魔法も使えないもの。増幅するにしても元がなければ、ただの石よ」

 リーゼロッテの言葉にヘルムートが言葉を詰まらせてしまったのも無理はない。
 どんな慰めだって意味をなさない。この国において魔法が使えないことの異質さを、その扱われ方を知っているからこそだ。

「あぁ。お気になさらないで。使えれば、とは思ってはいても、どうしようもないことぐらい分かっているわ。今更何とも思わないもの。それにね」

「それに?」

「この城の方は何も仰らずにいて下さるもの。誰もわたくしのことを罵ったりしないわ。蔑んだ視線だって感じることもないし。もちろん陰で何て言われていたとしても、わたくしが気づかなければ無かったことになるの。わたくし、本当に皆様に感謝しているのよ」

「そうですか」

「えぇ。それで? ヘルムートさんは魔力石が必要なの?」

「私はさほど魔力が多くはありませんから。度々お世話になっておりますよ」

 魔力石は使う者の魔力を増幅させることができる。それは威力であったり、回数であったり、時間であったりだ。
 使用人達が広い城を維持するのに使っていたとしても変ではない。

「そうだったのね」

「この城でずっと使わずにいられるのはベルンハルト様ぐらいでしょうか。アルベルトも普段は使わずにいられます」

「魔力の強い方が減っているというのは、本当でしたの」

「減ってきているかもしれません。私が幼い頃はもう少し、金髪の者が多かったようにも思います」

「それにしても、魔力石ってかなり貴重なものよね。アルベルトさんとベルンハルト様以外が使うって、そんなにたくさんお持ちなの?」

 王城の使用人の中でも重要な仕事に就いている者以外は持っていなかったはずだ。
 使いすぎて割れてしまえばそれまでの魔力石を、人数が少ないとはいえ使用人のほとんどが使っているというのは、信じられない。

「貴重なものではありますが、この城には思いの外たくさんありますよ」

「何故?」

「それは、もう間もなくわかります」

 ヘルムートのその言葉が合図になった様に、城中に高らかに鐘の音が鳴り響いた。リーゼロッテがロイスナーに来て三ヶ月、一度も聞いたことのない鐘の音。
 何事かと視線を泳がせれば、ヘルムートが穏やかに笑って告げる。

「ちょうど良いタイミングです。私がいる時で良かった。奥様、ご一緒に来ていただけますか? ベルンハルト様が討伐に向かわれます」
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