転生した悪役令嬢はあなたに似合うドレスを作りたい〜冷徹公爵様に溺愛されて服屋を開いたら王族御用達の大人気店になりました〜
ユリウスの結婚式から数日経った。

皇太子夫妻の誕生に、王国の祝福ムードは今も続いている。

あの日は、俺にとって特別な日になった。

生まれてからずっと、役立たずだと馬鹿にされて生きてきた卑屈な俺が、初めて両親に自分の意思を伝えて、今後の人生を切り開いた日。

両親から入れ知恵をされ、打算のために皇太子に近づいた俺は、本当にユリウスのことを信頼していたが、どこか心の中で負い目を感じていた。

しかしユリウスはそんな俺にブーケを投げ、唯一無二の大親友だと言ってくれた。

皇太子という肩書き抜きでも、俺はずっと仲良くしていたいという気持ちが、伝わっていたのが嬉しかった。

長年の悩みが一気に晴れた日。

あの日からようやく、ゆっくりと眠ることができ、晴れた空の下を堂々と歩けるようになった気がする。

それも、レベッカのおかげだ。

俺に勇気と信念を与えてくれた彼女に、今日正式にプロポーズしようと思っている。



* * *



今日は店を休んで、街の小高い丘で待ち合わせをしている。

薄闇が降りた時間に一人で歩くのは危ないと、彼女の家の前まで馬車を遣わせた。

昨日も会ったというのに、もう早く会いたいと思っている自分がいる。

時間になると、蹄の音を響かせて馬車がゆっくりと近づいてきた。

馬車から降りたレベッカは、今日は黒いドレスを着ている。

俺の顔を見てぱっと花が咲いたかのように笑うレベッカの笑顔は、本当に可愛らしい。

舞踏会で一緒に踊った時に着ていたものだ。肌の白い彼女にとても似合う。

彼女は俺に駆け寄って挨拶した後、目の前に広がる景色に感嘆の声を上げた。


「わあ、凄く夜景が綺麗ですわね……!」

「ああ。君に見せたかった」


あまり人通りがないが、ここから見える夜景は特別だと噂されている場所だ。


「見せてくださってありがとうございます」


レベッカは嬉しそうに微笑んでいた。

星空と、眼下に広がる家の灯りたちがきらきらと輝く。

彼女の横顔を見つめると、星よりも綺麗なその瞳が、夜景を見つめ輝いている。


「レベッカ」


彼女の美しい紅い髪を撫でると、深紅の瞳がこちらを向いた。


「俺と結婚してくれないか」


ずっと伝えたかったことだ。

俺は生涯、君のそばにいたい。


純粋な彼女は、まさかプロポーズされると思っていなかったのだろう、目を丸くしていた。

少し早急だったか。食事をした後の方がよかっただろうか。

しかし二人きりの時、この夜景の前で伝えたかった。

何を言おうか悩んだ様子で、レベッカがゆっくり口を開ける。


「とても嬉しいです。はい、と返事をしたいのですが……」


―――が?

店の閉店後の公園でも、ユリウスの結婚式でも、彼女の気持ちは確認していた。

ずっと俺と一緒にいたいと言ってくれたのに。

まさかの返答に、情けないことに俺の心臓は跳ね上がっていた。


嘘だろ。

断られるのか?


「私、クロード様にずっと黙っていたことがありまして……」


レベッカの細い指が、小さく震えていた。

何か隠し事をしていたということだろうか。


実は他に婚約者がいる?

俺の両親や家庭に嫌気が差し、白紙に戻したいと思った?

そもそも店の共同経営者なだけで、俺に気持ちなどなかった?


「教えてくれ」


緊張で喉の奥が締まり、声が掠れた。

もうループを繰り返したくない一心の俺が、彼女の気持ちを考えず先走ってしまっていただけかもしれないと、疑惑はぐるぐると頭を駆け巡る。


きっと俺は酷い顔をしていたに違いない。

レベッカは少々怯えながら、恐る恐る口を開いた。


「あなたは、何度も人生を繰り返して、今回が5度目なのですよね?」

「ああ、そうだ」


レベッカは俺に問いかけ、目を伏せる。


「……これまでの4回分のループ中に存在したレベッカと、私は別人なんです」


俺のことが好きじゃないとか、考えさせてくれとか、気持ちの問題ではない。

思いもよらない彼女の言葉に、俺は面食らった。
< 71 / 72 >

この作品をシェア

pagetop