転生した悪役令嬢はあなたに似合うドレスを作りたい〜冷徹公爵様に溺愛されて服屋を開いたら王族御用達の大人気店になりました〜
「私は以前、こことは違う遠い世界に生きていて、服飾店で働いていました。
どういう理由かわかりませんが、目が覚めたらレベッカとして生まれ変わっていたんです」

ずっと言いたくて、しかし黙っていた秘密ごとなのだろう。
堰を切ったかのように、彼女の言葉は止まらない。

「リリアに靴を作ったり、クロード様にタキシードを作った五度目の人生の私と、それまであなたが好きだったレベッカは、別人なんです!
あなたは、前のレベッカと結ばれるために、何度も繰り返していたのでしょう?
あなたが好きなのは、以前のレベッカです」


レベッカは目に涙を浮かべ、時折声を詰まらせながら語る。


「これからもずっと隠して、プロポーズを受けようとも考えました。
でも、嘘をついたまま、いつか失望されたら、耐えられないって思って……!」


ドレスの裾を握り、唇を噛み締め、彼女はぼろぼろと大粒の涙を流した。

遠い世界で生きていた別人格が、レベッカの中に生まれ変わったなんて、本来なら空想的で信じがたいが。

俺自身が何度も人生をループするという異常な自体に巻き込まれているので、嘘とは思えなかった。

以前ループのことを彼女に打ち明けた時、すんなり受け入れてもらえたのも、そういう事情からか。


全てが繋がった。



「ははっ、なんだ、そんなことか」



てっきりプロポーズを無碍に断られると思っていた俺は、安堵の声が漏れた。

しかし、レベッカは眉根を寄せて反論してくる。



「そんなことって…大事なことですよ? 中身が別人なんですから……っ!」



ずっと違和感はあった。

どんなに口調や仕草を似せようとしても、わかるものだ。

一人きりの図書館で、頭を整理しようとノートに、レベッカは『別人なのか?』と文字を書いたのを思い出す。



「気がついていたよ。
というか、気が付かないわけないだろう。全然違うんだから」


でもいつの間にか、そんなことはどうでも良くなっていた。

綺麗にドレスアップされ、喜ぶみんなの顔が見たいと、服を作る君は美しかった。

些細なことで一喜一憂し、泣いたり不安になったりするのに、ここぞという時、俺の両親に言い返すことができる芯の強さに、どうしようもなく惹かれた。

渾身の告白をして、不安で涙を流すレベッカに、俺の気持ちを伝えよう。



「前の君は、俺に自由の意味を教えてくれた」



放課後、二人きりの教室で、孤独な俺が羨ましいと彼女は言った。

生まれながらに絶望していた俺を、あなたは自由だ、という言葉で解き放ってくれた。


「今の君は、俺に居場所を与えてくれた」


『冷徹公爵』は自分の家で感情を出せず、『皇太子の腰巾着』は学園でいつも人目を気にして行動していた。

しかし底なしに明るい君が、『レベッカ・クローゼット』という店で、俺とともに歩んでくれた。


「どちらの君もとても大切な、俺の全てだ」


確かに4回分の人生は、凛とした彼女を追いかけていた。

2度追放令を出され、遠い極寒の地へと去っていった彼女。

その涙は、透明で綺麗で、真っ直ぐ頬に流れていた。



今目の前にいる5度目の彼女は、目の周りをぐしゃぐしゃにし、顔中が濡れている。

だがそれが、どうしようもなく愛おしい。



ポケットからハンカチを取り出し、レベッカの顔をそっと拭いた。

涙で潤んだ真紅の瞳と目が合う。

真っ白なハンカチ。

ループを繰り返したせいで、いつか俺の名前を書いてくれた刺繍は、消えてしまった。


でも、それでいい。



『あなたはどうか、後悔のない生き方を』


今生の別れをし、去り行く君が、大切なことを伝えてくれていたことに今更気がつく。

なぜだか、勉強会帰りの園庭のベンチにもう戻ることはないように思えた。


疑問がやっと解けた。



二度と君を泣かせない。

君に選ばれた自分を、誰よりも誇りに思おう。



俺は手を伸ばし、レベッカの肩を引き寄せた。

華奢な体は、いとも簡単に俺の胸の中に収まってしまう。

柔らかい髪を撫でて、強く抱きしめると、彼女の鼓動が一際強く高鳴ったのが分かった。



「ずっと、ずっと言いたかったことがあるんだ」



人生を何度繰り返しても、心から求めていた。

俺に生きる意味と価値を与えてくれた、赤毛の少女。



「レベッカ。君を愛している」



やっと言えた。

そして、君が笑っている。

もうなにも後悔はないのだと思った。
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