1日限りのニセ恋人のはずが、精鋭消防士と契約婚!?情熱的な愛で蕩かされています
「嘘でしょ」
父のうしろから、甘ったるく響く声が聞こえた。父は厄介な人物まで連れてきたようだ。
高級ブランドに身を包んだ、結都が最も苦手としている女性だ。
「たまたま大河内さんと新幹線で会ってね。ホテルが同じだというから食事でもと思ったんが」
「ほんとに結都さんの恋人なの、あなた?」
香澄の目つきが鋭かったので、思わず結都は紗彩をかばうように前に立つ。
「失礼ですよ、香澄さん」
キッと睨みつけたら、それ以上なにも言わなかったが面白くはなかったのだろう。
「私、気分が悪くなりましたの。お食事はご遠慮するわ!」
香澄は怒りながら去っていった。
「相変わらずだな、彼女は」
「そうですね」
珍しく父と意見があった。
母の親友の娘で大河内不動産の娘だからとわが家への自由な出入りを許していたが、あの性格はいただけない。
おまけに結都との関係も、親同士が決めた婚約者のように思い込んでいるようだ。
香澄とふたりだけで会ったこともないし、父との約束にもまったく関係ないのだから結都自身は困惑するばかりだ。
「さあ、食事にしよう。あなたもご一緒にいかがですか?」
父が紗彩を誘っているので、慌ててその場をごまかした。
「チョッと彼女のドレスにトラブルがありまして、お父さんは先にレストランへ行ってください」
「そうかい?」
「ホテルのブティックへ寄ってから、ふたりで行きますので」
なんて説明したらわかってもらえるだろうかと、結都は頭を抱えたくなった。
それでもキョトンとしている紗彩の手を引いて、ブティックまで急いだ。