1日限りのニセ恋人のはずが、精鋭消防士と契約婚!?情熱的な愛で蕩かされています
「あなたは」
「君とはたしか、足立病院や梶谷乳業で会ったような」
「はい。梶谷乳業で食品開発を担当している梶谷紗彩と申します」
「梶谷?」
「はい。母が社長を務めています」
結都は驚いた。社員かと思っていたら、まさかの社長令嬢だった。
どうりで言葉ひとつひとつに責任感のようなものが感じられたはずだ。
それに会社で会った時と今日は、まるで別人のようなのだ。
清楚で柔らかな顔立ちに、クリーム色のワンピースがよく似合っている。
会社では会ったときの知的な印象の女性とは思えない。
結都も自己紹介をして彼女を見たら、袖が変な形に下がってきた。おかしいなと思ってよく見ると、糸が切れている。
「少しほつれていますね」
ドレスの状態をよく見ようと顔を近づけたとき、横から声をかけられた。
「白川様、お探ししました。お父様がおみえになりました」
「結都、そのお嬢さんは?」
ホテル内をぶらぶらしていて彼女の危機を救えたのはよかったが、父との約束があったのだ。
「そちらの方を紹介してくれないのか?」
どこか期待しているような父の顔を見たとたん、なにか頭の中で閃くものがあった。
考える間もなく、結都の口が勝手に動いていた。
「彼女は、梶谷紗彩さん。梶谷乳業の社長のお嬢さんです」
それだけでは父に納得させるには物足りない。
「彼女とは付き合っています。つまり、俺の恋人です」
こんな紹介をされて驚いて嫌がるかと思ったら、黙ってくれている。
助かったが、突然の成り行きに言葉も出ないのだろう。
「そうかそうか! やっとその気になったのか」
思ったとおり、父は相好を崩して喜んでいる。