1日限りのニセ恋人のはずが、精鋭消防士と契約婚!?情熱的な愛で蕩かされています
「結婚するとなると、相手の人生に対して責任がある」
「そうですね」
「それくらい消防士の仕事に真剣だって、結婚することで証明しろということだ」
会社を継がないなら、実家を頼らなくても妻と生活していけることを示せということだろうか。
なんだか丸め込まれた気もするが、父親の立場ならそう考える気もする。
「この前、恋人のフリだったのは?」
「ああ。いかにも結婚前提で付き合っていますという形をとれば、しばらくは父も納得すると思ったんだ」
フリだったものがいきなり結婚することになって大丈夫なのだろうかと、紗彩は考えた。
「お父様が納得なさるでしょうか。それに、うちの会社に援助していただくのは筋が違いませんか」
「妻の実家を援助するのは当たり前だ」
簡単そうに言われたが、紗彩には引っかかる言葉だった。
親を頼るなという意味で結婚をせかされているとしたら、妻の家への援助を求めるのはおかしい。
確かに白川ホールディングスの助けは欲しい。ハッと紗彩の脳裏にひとつのアイデアが浮かんだ。
「それなら、お父様やお母様にプレゼンさせてください」
「プレゼンテーション? なぜ?」
「ほんとうに梶谷乳業の製品を美味しいと納得していただいてから、援助をお願いしたいです」
ここで甘えてしまってはいけない。まだまだビジネスにうとい紗彩だが、納得できる道を選びたい。
(ダメでもともと。一生懸命開発した商品を、味わっていただきたいだけ)
紗彩は覚悟を決めて、結都に微笑んだ。
「白川家に伺う日はいつになりますか? いくつか考えている商品を完成させますので」
その時、廊下のガラス窓が、ピカッと光ったような気がした。
それからゴロゴロと小さな音が聞こえてきた。どこか遠くで雷が鳴りはじめたようだ。
窓に打ちつける雨粒の音が大きくなってくる。
そろそろ梅雨明けが近いのだろうかと思わせる荒れ模様になってきた。
天気予報を見ておくんだったなと、紗彩は的外れなことを考えていた。