1日限りのニセ恋人のはずが、精鋭消防士と契約婚!?情熱的な愛で蕩かされています
(父から子どもを作れと言われているなんて、話せるわけがない)
紗彩に受け入れてもらうために、この結婚は形だけだと最初に伝えてしまった。
普通の夫婦である必要はないと話したとき、紗彩は動揺しつつもホッとしていたのを覚えている。
そういう前提だから、引き受けてくれたようなものだ。
会社のためならなんでもするという紗彩に、子どもまで産んでくれとは言いだせなかった。
(それにしても、プレゼンか)
面白いことを思いつくものだ。
実業家である白川正親相手にどんな話をするつもりなんだろう。
楽しみでもある反面、両親が結婚に反対したら困る。
うまく切り抜けられるよう、サポートした方がいいかもしれない。
ふと、病院のベッドに横たわっていた紗彩の母を思いだす。
(急に結婚すると報告したが、想像以上に喜んでくれたな)
おそらく病気で気弱になっていたから、娘の将来が心配だったのだろう。
弱っている母親のためにも、ますます紗彩に対しての責任を感じた。
うそをついてしまって申し訳ない気持ちもあるが、それを補う以上に梶谷乳業への支援は手厚くしたい。
結都は紗彩の研究が花開くよう、全力で応援しようと誓った。
(まるで運命共同体だな)
ふたりとも自分のやりたいこと、自分の仕事のために結婚する。
今はただ、この計画がうまくいくように願うしかなかった。