1日限りのニセ恋人のはずが、精鋭消防士と契約婚!?情熱的な愛で蕩かされています


紗彩を送っていく帰り道、車の中ではつい無口になってしまった。
安全のためとはいえふたりで暮らすことを自分から提案したというのに、なにを話せばいいのかわからない。
強引すぎたかもしれないが、彼女がひとりでいるのが心配なことに間違いはない。

消防士の仕事を続けるためだけだった紗彩との政略結婚が、思いがけない方向へ進んでいる。
梶谷乳業への援助が、白川ホールディングスとしても新たな観光事業を進めるきっかけになったのだ。
おまけに紗彩の母の入院という事態になって、一緒に暮らすことを決めてしまった。

黙ったまま外の景色を見つめている紗彩は何を考えているのだろう。
夕方から夜に変わる時間、茜色の空がわずかずつ闇に染まっていく。
やがて満点の星空が広がるのを待っているようにも見える。

(後悔しているかもしれないな)

結都とホテルで会ったことで、とんでもないことになってしまったと思っているかもしれない。
それでも結都はどこか楽しかった。すべてが想像できない方向へ転がっていく。

(ああ、星が綺麗だ)

とうとう夜空になった。紗彩は無口なままだったが、結都は落ち着いていた。
この先、紗彩とどんな関係になれるのか、どうなりたいのか自分でもよくわからない。
ただ紗彩とともにいることが、結都の中であたり前になりつつあったのだ。



***



病室に入ると、紗彩の母は元気なさそうに見えた。
だが紗彩の顔を見ると、今日の話を聞きたそうにしていた。

「どうでした? 紗彩はちゃんとご挨拶できたかしら」
「はい。両親ともに喜んでくれました」

母としての立場なら、大切な娘をひとりで挨拶に行かせるなんて心配でたまらなかっただろう。
そのうえ会社の援助を頼むという大仕事まで背負わせたのだから、どんな気持ちで待っていたことか。





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