これを運命というのなら
わかった、と陽希さんが応えたと同時に唇が重なって。

深まっていくキスの合間に、服が乱されていって。

晒された肌に陽希さんの唇が触れて、指先と手が触れて。

すっかり溶かされた私と陽希さんがひとつに繋がった時―――

鎖骨の下に針で刺されたような僅かな痛みが走って、紅い華が咲いたのだとわかった。


「俺のもんやからな……綾乃も……どこにも行こうとすんな……」


緩やかな律動の中、陽希さんの吐息交じりの声が耳元に触れて。

あっ……うっ……んっ………!!

声にならない返事が吐息と共に零れ出て。


奥に当たった瞬間に、背中が弓形になって――陽希さんの腰を離すまいと抱き締めていて。


「ここ……やろ?」


そう、そこ!

親指で襞を押されたら………絶頂の波に呑まれてしまう。


あれから数え切れないくらい陽希さんに抱かれて。


陽希さんの体温、厚い胸板、広い背中、繰り返す筋肉の躍動、艶っぽい表情やキスの合間の笑顔、声や吐息、このすべてが。

私の五感に心地好く馴染んで。

きっと、いや間違いなく陽希さんの私を満たす全てが……私のために誂えられたんだと抱かれる度に思ってしまう。


だったら、もう。


「どこにも行けへんよ……行かれへん……」


俺もやで、とキスをくれた陽希さんの表情は、帰って来た時よりも晴れていて。

タバコを吸いながら、何回イカされたのかわからない私の身体を包み込んでくれている。
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