これを運命というのなら
綺麗になったんちゃう、と。

触れ合っている太腿を避けるように足を組んで、タバコをつけるた俺に。

嬉しい、組んだ足の太腿に置かれた手に手を重ねて。

押し返すように玲の膝に置くと、拗ねたように頬を膨らませた玲に切り出すか。


「お前が最近……雰囲気変わったって噂になってるで。ほんまに男でも出来たんか?あんなに俺を好きやって言うてやん?」


一瞬――目を見開いて、え?と言うた玲やけど。

瞳を逸らして、ほんまに出来てへん。

今でも私は伊藤さん一筋やで。

ふーん……、逸らされた瞳を覗き込むと――少し赤らんだ頬で……酔ってるわけではないやろ。

玲はそこそこ酒は強いはずやし、店が開いたばかりやし客に付くのは俺が始めてのはずやし、まだグラスのウィスキーを2口しか口にしてへんし。

ということは………俺一筋はほんまやな。


「玲……アダンと話す機会を作ってくれへんか?」


遠回しよりストレートに聞くのが手っ取り早いな。

目を丸くした玲は、数分黙り込んで―――、それなら……明日の出勤の時間までの時間を私にくれる?

返事する時間ほしいねん……明日の朝まで。


そういう条件を出してくると、おおかたわかっていたのは玲もキタの女やから。

けど……

すぐに返事をせぇへんかったんは綾乃には、話をして不安を拭いたかってん。

オフィスに帰る道すがら――〈明日、玲と2人で会ってくるな。それがアダンとの時間を作ってくれる条件らしい。店に寄れんくてごめんな。〉


恵美にLINEを入れた。
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