今日は我慢しない。
「やだわ誠太ったら人聞きの悪い。子供のスマホひとつ管理できないで親は務まりませんから」


 悪びれる様子もなくお茶と焼き菓子をテーブルに並べていく母さんに言葉をなくす。


「念には念をと思ってやっておいたけど正解だったわ。 彼女、Ω優遇制度を使って学園にいる子なんだってね。 やっぱり卑しい空気がすると思ったのよ。 ほら座んなさい誠太」

「……」

「誠太」


 母さんの目が、瞬きもせずまっすぐにこちらに向いている。
 
 言うことを聞かないとただじゃおかない、という圧力。

 今まで俺はこれに逆らったことがほとんどない。

 逆らうほどの理由がなかったからだ。

 それに兄を見てきて、逆らったところで力づくでレールの上に戻されることも知っている。

 ……でも


「っ……」


 三条が、待ってる。


 俺はぐっと拳を握った。


「悪いけど、もう母さんの言いなりにはならない」


 母さんの目が見開かれ、ゆっくりと笑顔が消えていく。


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