今日は我慢しない。

 宅配かな。

 母さんかハウスキーパーの蓮田さんが出るだろうから、特に動く気にはならない。



 ……?

 玄関のドアが開く気配がない。


 
 ピンポーン、と再び呼び鈴が鳴る。

 なんで出ないんだ?


 気になって部屋から出ようとした時、ようやく母さんがドアを開ける音がした。



「何か用かしら?」



 開口一番、来客に言うセリフにしては冷たすぎる。

 相手は誰だ……?

 気になって階下の音に耳をそばだてた。



「こんにちは。誠太さんと話をしに来ました」



 !

 三条……!?



「ごめんなさいね。誠太は会いたくないって言ってるのよ」

「……誠太さんがそう言ったんですか?」

「ええ」


 言ってない。

 ほんとよくこんなスラスラと嘘つけるな。


 ……でも


 いま下に行って会いに行く資格もない。



「……そうですか」

「悪いわね」



 三条の声は淡々としていて、そこに感情は読めない。

 これで三条の声を聞くのは最後になるかもしれないな……。



「また来ます」

「……!?」


 母さんの返事を待たず、ドアの閉まる音がした。

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