今日は我慢しない。


 鮮明に思い起こされた情景に押しつぶされそうになって、拳をぎゅっと握った。


「なゆぴ?マジで大丈夫?」


 心配そうなミクちゃんに顔を覗き込まれてハッとする。


「あ、ごめんぼーっとしてた。大丈夫だよ」


 なんとか気を取り直して笑顔をつくる。


 私は怖いんだ。

 αと番になったら、お母さんみたいになるかもしれないって。

 だからずっと一人で生きていくんだって、強くならなくちゃいけないんだって言い聞かせて生きてきた。

 たとえ佐柳が相手でも、その生き方を変えることは簡単じゃない。


 〝お母さんみたいになっちゃだめ〟


 ……もしかしたら私は、一生お母さんの言葉に縛られて生きていくのかもしれない。




「あ!佐柳!」


 近くを歩く男子が後ろに向かって叫んだ。

 反射的に私とミクちゃんも振り向く。


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