今日は我慢しない。
𓈒 𓏸 𓐍







「さぁ、遠慮せずなんでも食べてくれ」


 駅前のよくあるファミリーレストラン。

 鶴城真澄はメニュー表を向かいにいる私に差し出した。

 大きく載せられた美味しそうなハンバーグやスパゲッティは、いつもなら空腹を刺激してお腹を鳴らそうとするのだけど

 今日ばかりは音沙汰なく、むしろ胸焼けがした。


「……遠慮します」

「そうか。じゃあドリンクバーにしよう」


 鶴城真澄はさほど気にするそぶりもなく、メニューを下げてニコッと微笑んだ。

 その微笑みに眉間がひくついて、喉元から押し寄せようとするドス黒い感情をグッと堪える。


 今、私とお母さんの人生を狂わせた張本人が、しれっと目の前に座っている。


 そんな状況で、ご飯なんか食べれない。



「……」



 外には雨が降り出して、窓に雨粒をポツポツと落としていく。


< 161 / 183 >

この作品をシェア

pagetop