今日は我慢しない。

「っ……!」



 同時に、ぼろぼろと涙がこぼれだす。


 
「なに、それ」



 あの日、窓の外の夕焼けの先にお母さんが見ていたのは

 遠くにいる愛する人だったのだろうか。



「バカじゃないの、お母さん……っ」



 流れる涙をそのままに言うと、私の目の前にいるその人も同じように涙をこぼし始めた。



「そうだね……そばにいられるなら、それだけで幸せだったのに」



 顔を覆う手に伝う涙の粒は、ポタポタとテーブルの上にこぼれ落ちる。


 
「ずっと探してたんだ、紗世のことを……一度はあきらめたが、やっぱりあきらめきれなくて……まさか、そんな苦しんでたなんて……。番になっているって知ってたら、君がお腹にいるって知ってたら、何がなんでも駆け付けたのに!本当にバカだよ、紗世は」



 そのたくさんの涙から、どうしようもない怒り、悔しさ、悲しさが伝わってくる。

 その全部から、お母さんへの果てしない愛を感じた。



「こんな私だが……今からでも、君のお父さんになっていいだろうか」



「っ……、」




 お母さんはちゃんと愛されていたんだ。


 そう思っただけで、胸が張り裂けそうに熱くなった。



 嬉しくて、嬉しくて。

 私は流れる涙はそのままに、大きく首を縦に振った。




 
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