今日は我慢しない。



 それからお父さんと二人で、佐柳と田中さんに見守られながらたくさん泣いた。

 涙が枯れ果てたころにみんなでご飯を食べながら、お母さんの話をたくさん聞いた。

 若い頃のお母さんと私がそっくりなこと、お父さんがお母さんに一目惚れしてアプローチしてもなかなか靡いてくれなかったこと、
 初めてのデートで『那由多から』というタイトルの映画を観たこと。
 どうして私のことがわかったのかと聞くと、お父さんは1週間ほど前にたまたま学園祭の動画で私を見つけて、容姿と名前からピンと来たそうだ。
 それでも会いにくるつもりはなかったけど、車でたまたま私がスーパーにいるのを見つけ、思わず追いかけてしまったと。

 食べ終わるころお父さんはすぐに仕事に戻らないといけないとのことで、連絡先だけ交換して私たちは別れた。



「……あ、佐柳ごめん、こんな遅くまで付き合わせて」

「全然平気。帰ろっか」

「うん!」


 二人横並びで静かな夜道を歩いていく。

 雨はいつの間にか止み、肌を撫でる夜風が気持ちいい。


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